■ トグル制震装置概要
トグル制震装置は、2 本の鋼製トグル腕部材と1本のオイルダンパーがピン接合されるものを1基とする制震装置です。本装置は、「てこ(トグル)機構」により地震時に変形する建物の層間変形の約2倍をダンパーに増幅変形させることで、地震エネルギーを効率的に吸収する制震システムです。
トグル制震装置には、1層間に配置する「単層型」と2 層間に配置する「複層型」のタイプがあります。「複層型」の場合は、「単層型」と比較して、オイルダンパーのエネルギー吸収効率を約4倍とすることが可能です。「複層型」のトグル制震装置は、当社独自の新技術です。
写真1 単層型トグル制震装置
写真2 複層型トグル制震装置
■ トグル制震装置の6つの特徴
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1 シンプルな制震装置です。
各部材をピン接合とすることにより、曲げモーメントが発生しない軸力のみの伝達とすることで、部材をコンパクトに製作することが可能です。各部材の直径は216.3mmを基本とする鋼管を使用しており、構成部材をシンプルに見せることができます。
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4 様々な構造形式に適用可能です。
トグル制震装置は、RC 造を始め、S造から木造までの様々な構造形式に適用されております。また当社では、伝統木造建築物や大型鉄塔等の特殊構造物にも適用実績がございます。
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2 基本的にメンテナンスフリーです。
エネルギー吸収装置として、「オイルダンパー」を採用しております。オイルダンパーは、経年に対する劣化がほとんどありません。従ってメンテナンスは、オイル漏れを目視点検すれば良いとされております。ただし、オイル漏れが生じた事例はありませんので、基本的にメンテナンスフリーとしております。
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5 在来型の耐震補強と比べて、耐震性能UP やコストDOWNが可能です。
トグル制震装置は、構造耐震指標Isが0.6以下となる建物の補強に多く採用されております。在来型の強度補強と比べて補強量を1/2 ~2/3にすることができ、工期の短縮が可能です。特に中高層建築物の耐震補強は、コストメリットが大きく生じます。
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3 意匠を重視する場所への設置が可能です。
(パブリックスペースetc.)写真3のように、デザインを重視した構成も可能です。屋内、屋外を問わず配置できます。また、写真4のように出入口などの通路を設けることも可能です。
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6 長周期地震動の影響を受ける超高層建築物でも制震効果を発揮します。
平成23(2011)年 東北地方太平洋沖地震において、長時間継続する「あと揺れ」が、超高層建築物で問題となりました。トグル制震装置は、建物に与える大きな粘性減衰により「あと揺れ」を迅速に抑える制震効果を発揮致します。
写真3 デザインを重視した単層型トグル制震装置
写真4 通路を確保した単層型トグル制震装置
■ トグル制震装置の単層型と複層型の比較
複層型トグル制震装置は、2 層間の柱・梁内へ配置するため、単層型と比較して地震時のエネルギー吸収効率に優れます。中高層建築物において、単層型と複層型の建物応答性能を同等とする耐震補強設計例において、制震装置基数と床補強面積の関係をみると下図のようになります。
以上のことから、複層型は、単層型と比較して設置基数および躯体補強量の低減が可能となり、コストメリットが生じます。また、開口部への阻害が小さいことも、大きなメリットのひとつです。
単層型と複層型の比較例 | ||
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装置種類 配置例 | 単層型トグル制震装置 | 複層型トグル制震装置 |
設置位置 | 1層間柱・梁内 | 2 層間柱・梁内 |
入力変位 | 1層間変位 | 2 層間変位 |
中高層建築物の設計例 (制震改修) | ||
制震装置数 | 104 基 | 48 基 |
床補強面積 | 床補強面積975m2 | 床補強面積556m2 |
■ トグル制震装置のラインアップ
単層型 | 複層型 | |
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500kN用 | オイルダンパー特性:最大減衰力500kN、最大速度440mm/s オイルダンパー外径、 トグル腕部材外径:共にφ216.3mm〔スマートな構成〕 | |
650kN用 | オイルダンパー特性:最大減衰力650kN、最大速度700mm/s オイルダンパー外径:φ270.0mm トグル腕部材外径:φ216.3mm | オイルダンパー特性:最大減衰力650kN、最大速度700mm/s オイルダンパー外径:φ270.0mm トグル腕部材外径:φ232.0mm |
850kN用 | オイルダンパー特性:最大減衰力850kN、最大速度700mm/s オイルダンパー外径:φ270.0mm トグル腕部材外径:φ232.0mm | オイルダンパー特性:最大減衰力850kN、最大速度700mm/s オイルダンパー外径:φ270.0mm トグル腕部材外径:φ232.0mm |
その他 | ■写真3のように、デザインを重視したトグル制震装置の製作も可能です。 ■ 粘性型ダンパーであるオイルダンパーを、質量型+粘性型のD.M.(ダイナミック・マス)ダンパーとしたトグル制震装置の製作も可能です。大きな質量(ダイナミック・マス)を与えることにより、建物の振動モードを制御する次世代型のハイブリッド制震装置です。※N大学R学部新校舎に設置 |